「良かれと思って導入したツールなのに、現場からは不満ばかり……」

「『ここが使いにくい』と言われても、改修には追加費用がかかるから直せない」

「結局、現場は昔ながらの紙やExcelに戻ってしまった」

DX推進を任された管理者やリーダーの方々から、このような悲鳴にも似た相談をよく受けます。

システムを導入する際、要件定義に何ヶ月もかけ、完璧なものを作ろうと努力したにもかかわらず、なぜ現場には定着しないのでしょうか？

その答えは、現場の業務は常に変化しており、最初から完璧な正解を作ることは不可能だからです。

今回ご紹介する「そのままDX」のアプローチは、これまでの「作って終わり」のシステム導入とは根本的に異なります。

本記事では、管理者が板挟みにならず、現場と協力しながらDXを成功させるための具体的なメカニズム、「育てるDX」について解説します。

なぜ、多くのDXツールは現場で「放置」されるのか？

まずは、DX導入で失敗してしまう典型的なパターンを見てみましょう。あなたも経験がありませんか？

• 導入前： 管理者とベンダーだけで仕様を決めるため、現場特有の細かなニュアンスやイレギュラー対応が伝わらない。

• 導入直後： 現場から「入力項目が多すぎる」「現場のスマホだとボタンが押しにくい」といった不満が噴出する。

• その後： システムの修正を依頼すると**「数十万円の追加見積もり」**が出てくるため、予算が降りず放置される。

• 結末： 現場は使いにくいシステムを捨て、慣れ親しんだ紙とExcelに戻る。

この悲劇の原因は、「一度作ったシステムは簡単には変えられない」という従来の固定観念と、改修コストという技術的な制約にあります。

しかし、「そのままDX」であれば、現場に合わせてシステムを後から育てることが可能です。

追加費用なし！「そのままDX」の最強の改善サイクル

従来のシステム構成図ではあまり見られない、「現場メンバー ⇔ そのままDX ⇔ 経営・管理」をつなぐ双方向の矢印こそが、成功の鍵です。

現場からの「フィードバック」を歓迎する

通常のシステムでは、現場からのクレームは管理者にとって耳の痛い話です。しかし、このモデルではフィードバックこそがシステムを進化させる「燃料」になります。

現場メンバーが日々の業務（日報、在庫管理、品質検査など）の中で感じた「違和感」や「改善要望」を吸い上げる仕組みが前提となっています。

チャット依頼で、即座に「修正」が可能

ここが最大のポイントです。フォーマットの修正や機能追加のために、外部ベンダーに発注して何ヶ月も待つ必要はありません。

管理画面からチャット形式で依頼するだけです。

• 「項目Aはいらないから消して」

• 「選択肢Bを追加して」

• 「ここは手書き入力にしたい」

• 「ここに承認印（ハンコ）を押せるようにしたい」

このように伝えていただければ、最短1時間で修正に対応いたします。

「入力テスト」と「改善案の反映」

修正したフォーマットは、すぐに現場で試してもらうことができます。

「直しました。どうですか？」「あ、これなら使いやすいです！」

このキャッチボール（PDCA）が1日単位で高速で回ることで、システムは現場の業務実態に限りなくフィットした形へと「成長」していくのです。

管理者自身の業務も「データ変換」で劇的に楽になる

現場のためにシステムを改善し続けることは、管理者自身にとっても大きなメリットをもたらします。現場が喜んで入力してくれればくれるほど、管理者への恩恵が増える仕組みになっているからです。

「データ集計」と「データ変換」の自動化

現場からのデータ入力がスムーズに進むと、これまで管理者が残業して行っていた以下の業務が自動化されます。

• バラバラの報告書のとりまとめ

• Excelへの手入力・転記作業

• 日次・月次の集計レポート作成

システム内でデータ変換が行われ、管理者の手元には整理されたデータが届きます。

これにより、管理者は「集計作業員」から卒業し、本来の役割である報告受理・承認、コメント記載といったマネジメント業務に集中できるようになります。

経営層への報告もスムーズに

経営層への報告も、ワンクリックあるいはデータベースの共有だけで済みます。

「あの数字どうなってる？」と聞かれてから、慌ててExcelを開いて集計する時間はもう必要ありません。

完璧を目指さない勇気。「60点のプロトタイプ」から始めよう

この「運用しながら育てる」仕組み（アジャイル型開発）の最大の利点は、導入時のハードルが極めて低いことです。

従来のシステム導入では、失敗が許されないため、要件定義に膨大なエネルギーを費やしました。しかし、「そのままDX」のように後から柔軟に変更できるツールであれば、最初は「60点」の出来でスタートしても問題ありません。

1. まず、最低限必要な項目だけのシンプルなフォームを作る。

2. 現場に使ってもらう。

3. 「もっとこうしたい」という要望が出てから機能を追加する。

このステップを踏むことで、現場メンバーに「自分たちの意見で使いやすくなった」という当事者意識が芽生えます。これこそが、システム定着の鍵となる「納得感」です。

管理者の役割は「監視役」から「改善の調整役」へ

これまでの管理者は、導入されたシステムのルールを現場に守らせる「監視役」の役割を強いられがちでした。

しかし、「そのままDX」のような柔軟なツールを手にしたとき、管理者の役割はポジティブなものに変わります。

現場の声を聞き、システムを調整し、みんなが働きやすい環境を整える「改善のファシリテーター（調整役）」になるのです。

• 現場からの「使いにくい」は、改善のチャンス。

• 仕様変更は、コストではなく「投資」。

このサイクルを回せるようになったとき、あなたの組織は「変化に強い、学習する組織」へと生まれ変わっているはずです。

まずは小さく、現場の声を聞くところから始めてみませんか？